音声翻訳はビジネスに使える?
使い分けたいおすすめの自動翻訳サービス

(2020年11月13日更新)

マイクに向かって話した言葉を瞬時にテキスト化して、リアルタイムで翻訳する「音声翻訳アプリ」。 自動通訳・翻訳を実現する素晴らしいテクノロジーですが、果たしてビジネスの現場でも活用できるのでしょうか?

今回は、代表的なおすすめの音声翻訳サービスを比較し、それぞれの特徴やメリット・デメリットをご紹介します。

Google翻訳・ポケトーク・オンヤク。音声翻訳のメリットとデメリット

同時通訳者に依頼する場合、打ち合わせや見積もりなどの手間を入れると、どんなに急いでも2~3日の時間が必要です。また、マイナーな言語や高度で専門的な内容の場合、正確に訳出できる通訳者を確保することが難しく、それに応じて通訳料金も上がります。

音声翻訳の最大のメリットは、そうした人的・費用的な心配がないこと。 時差のある会議もすぐにスケジュールを組むことができますし、英語をはじめとした多言語に対応しています。

以下、人気のある代表的な音声翻訳サービスを見ていきましょう。

【Google翻訳】

無料で利用できるGoogle翻訳の強みは、豊富なデータを元にした翻訳の精度と対応言語の多さです。 スマートフォンにアプリをダウンロードして話しかければ、自動でターゲットとなる言語へ翻訳。 ただし、長い文章を話し続けると、文章の区切りを判別できず、結果的に長々としたわかりづらい訳文になってしまいます。 また、翻訳する際には元の言語と翻訳先の言語を指定しなければならず、複数の言語が入り乱れる会議ではリアルタイムでの訳出が難しくなります。

●Google翻訳のメリット:
・無料
・文字数無制限
・103言語に対応

●Google翻訳のデメリット:
・長時間のリアルタイム翻訳には不向き

【ポケトーク】

海外旅行者に人気のポケトーク。出張先でのコミュニケーションツールとして利用する人もいるようです。文字をカメラで撮影して翻訳するカメラ翻訳機能が付いていて、読み方がわからない言葉をどう発音するのかも教えてくれます。 シンプルなつくりなので、スマートフォンの操作が苦手な人やシニア世代にとっては使いやすく、親しみやすいでしょう。 ただ、基本的に短い簡単な会話を想定しているため、専門的な商談や長時間の会議には向きません。

●ポケトークのメリット:
・機械操作が苦手な人も使いやすいシンプルな設計
・カメラ翻訳機能付き

●ポケトークのデメリット:
・専門的なビジネス用語の訳出には限界がある

【オンヤク】

オンヤクは株式会社ロゼッタが提供する会議音声翻訳ツールです。パソコンにインストールするだけで使用でき、ZoomやSkypeといった任意のビデオ会議システムに対応可能。 ビデオ会議画面の横で、まるで字幕のように瞬時に発話内容を書き起こし、リアルタイムで翻訳します。 発話者を認識してターゲットとなる言語に翻訳するため、複数人での会議でも混乱することがありません。 また、web会議だけでなく対面の会議にも対応していて、議事録作成に役立ちます。 ブラウザを複数立ち上げたり、スマートフォンとパソコンの画面を見比べたりする煩わしさもなく、ビジネスの現場で活用しやすい音声翻訳です。

●オンヤクのメリット:
・web会議アプリケーションとの併用が可能
・長時間の会話や複数の発話者にも対応
・対面の会議でも利用できる

●オンヤクのデメリット:
・利用前に問い合わせ・申し込みが必要

リアルタイムには音声翻訳、ビジネス文書にはAI自動翻訳が最適

手軽で便利な音声翻訳アプリですが、まだまだ課題も多く残されています。 翻訳された内容を文書として保存する際に気を付けたいのが、「えーと」などの間投詞や言い直し、相槌など、音声データにありがちなノイズ。 こうしたノイズをそのまま文章に残すと、非常に読みづらい上に、実際の発話とは異なるニュアンスで伝わってしまいます。 同様に、会話中によく出る「この」「そちら」といった指示代名詞や、プレゼン資料などに添付されるビジュアル情報の言及を翻訳する際も注意しなければなりません。

会議などのリアルタイム翻訳には音声翻訳、より正確性が求められるビジネス文書の翻訳には精度の高い自動翻訳といったように、用途に合わせて使い分けると良いでしょう。

なお、ビジネス文書の翻訳には有料のAI翻訳がおすすめです。 無料の翻訳ツールでは対応しきれない医療・化学・機械・金融・法務などの難しい専門用語にも的確な訳語を選択。例えば、ロゼッタのAI自動翻訳「T-4OO」は、2,000の分野ごとに自動翻訳をチューニングすることで、業界の専門用語に即した精度の高い翻訳を提供しています。

【例】
・“Diet”⇒「ダイエット」「食事」の他に「議会」「国会」という意味も。
・“Cell”⇒「細胞」の他に「電池」という意味も。

ビジネスにおける翻訳においては、上記のように文脈に即した訳し分けが必須です。 この他にも、科学用語や経済用語には特定の単語に対応した日本語訳が決められており、それ以外の訳語を使用した場合、意味が通じない上に、大きな誤解を招く恐れがあります。 有料のAI翻訳なら、企業ごと/分野ごとに頻出する単語に対応する訳語をカスタマイズできるため、誤訳リスクを回避することができるのです。

音声翻訳と精度の高いAI翻訳を賢く併用し、海外ビジネスをスムーズに

スピードが求められるビジネスにおいて、「重要な会議なのに通訳が手配できない」という問題でビジネスチャンスを失う事態は避けたいところです。 時間や対応言語を問わず何度でも利用でき、テキストログ化して議事録作成の時間も省くことができる音声翻訳は、これからなくてはならないツールとなることでしょう。

ただし、ビジネスシーンでは、専門性の高い文書のやり取りも発生するため、まだまだ音声翻訳だけでは対応しきれない現実もあります。 音声翻訳と、精度の高いAI翻訳を賢く併用することで、海外ビジネスをスムーズに進めていきましょう。

筆者:Chiyo Watanabe Kamino/ライター・翻訳者
兵庫県出身。大学卒業後、商社勤務を経てアメリカで3年、オーストラリアで2年間過ごす。 帰国後はライターとしてプリントメディア/ウェブメディアに寄稿する傍ら、イベント制作会社にてビジネスカンファレンスや国際アワードの運営に携わる。現在は外資系ベンチャーキャピタルにてマーケティング・コミュニケーションを担当。字幕翻訳が趣味