無料翻訳サイト VS ビジネス向けAI翻訳サービス
その精度を徹底比較!ビジネスに最適なのは?
(2020年11月13日更新)
AI技術の向上により、急速に精度が高まっている自動翻訳。文章を入力すると瞬時に正確な翻訳文が作成される画期的なシステムの登場により、言語の壁は低くなりました。 ただ、気になるのは、高い精度やスピードが求められるビジネス翻訳において、無料の自動翻訳サービスがどこまで通用するのかという点です。
今回は、日本で頻繁に利用されている代表的な無料の翻訳サイトと有料のAI翻訳サービスを徹底比較。例文を翻訳し、精度を比較しました。
目次
4つの無料の翻訳サイトと、有料のAI翻訳サービス「T-4OO」の特徴
今回は、4つの無料の翻訳サイトと、有料のAI翻訳サービス「T-4OO」で検証します。
【Google翻訳】
2016年に「ディープラーニング」と呼ばれるAI技術の導入により、翻訳精度が飛躍的に向上しました。
現在は100言語以上に対応しており、テキスト翻訳のみならず、ウェブ翻訳、さらには音声認識によるテキスト入力など、幅広い機能を持ち合わせています。
また、スマホ用アプリも提供しており、会話モードやカメラ入力、オフライン翻訳など、海外旅行時や日常的な英語翻訳に適しています。
【Webilo翻訳】
日本語圏内向けのオンライン百科事典や辞書を提供するウェブリオ株式会社が運営する無料の翻訳サイトです。
データベースが豊富なことから、複数の翻訳文の結果が表示されることもあり、最適な翻訳を選ぶことができます。
この他にもウェブサイト翻訳、ダウンロード機能や再翻訳機能、さらには音声再生まで搭載しており、英語学習にも活用しやすいでしょう。
【エキサイト翻訳】
エキサイト株式会社が提供する無料翻訳サイト。
30か国語に対応し、特徴は理学系から農林水産系、さらにはスポーツ系、生活系と、100を超える豊富な分野から選択できます。
再翻訳機能や保存機能など使い勝手の良いツールがそろい、「文章規則に沿った文章」の翻訳を得意とするため、技術書や論文、ビジネス文章などに使えます。
【DeepL翻訳】
今年の3月に日本語と中国語が加わったばかりの無料の翻訳サイトです。
DeepL社の前身である訳文検索エンジンLingueeの莫大なデータベースに加え、ディープラーニングを採用。
テキスト入力をはじめ、ワードやパワーポイントファイルをドラッグ&ドロップする機能もあります。有料プランも提供されています。
【T-4OO】
株式会社ロゼッタが提供する有料のAI翻訳サービス。
専門分野ごとにAIを搭載し、機械翻訳エンジンに学習をさせることで専門用語に強く、プロ翻訳者レベルの正確さを実現しています。
T(Translation)4OO(for Onsha Only)のネーミングからもわかるようにカスタマイズ性に優れ、使えば使うほど、利用するユーザーに合わせた自然な訳文が作成できます。
選択できる分野は2,000を超え、テキスト翻訳やウェブ翻訳に長けており、ビジネスでの実用性が非常に高いのが特徴です。レイアウト崩れがおきないファイル翻訳の素晴らしさは特筆すべきポイントです。
実際に例文を翻訳!無料の翻訳サイトと有料のAI翻訳サービスの精度は?
では、それぞれの精度を比較するため、下記の例文を翻訳してみましょう。
【例文】
①:Unfortunately we couldn't come to a consensus, so I will have to come back to you.
②:The wage subsidy will be applicable to around six million workers, who will receive a flat payment of $1500 per fortnight.
③:平素はなにかとお引き立てを賜わり、厚くお礼申し上げます。
④:クリック率を高めてコンバージョンに繋げる。
【筆者によるマニュアル翻訳】
翻訳①:残念ながら、合意に達することができなかったので、再度ご連絡させていただきます。
翻訳②:賃金補助金は約600万人の就労者に適応され、隔週に一律1500ドルの支払いが受けられます。
翻訳③:Thank you for your continuous support.
翻訳④:Increasing CTR leads to conversion.
【Google翻訳】
翻訳①:あいにくコンセンサスが取れなかったので、またお会いしましょう。
翻訳②:賃金助成金は、約600万人の労働者に適用され、2週間に1500ドルの定額支払いを受けます。
翻訳③:Thank you very much for your kind support.
翻訳④:Increase CTR and convert.
目立った誤訳はありませんが、①のイディオム(come back to you)を認識しなかったこと、④の“繋げる”というニュアンスを正確に翻訳できていないことが指摘できます。 全体的に見ると読みやすい自然な文章で、①と③からもわかるようにカジュアルなトーンで翻訳されています。
【Webilo翻訳】
翻訳①:残念なことに、我々はコンセンサスに達することができなかったので、私はあなたに戻って来なければなりません。
翻訳②:賃金助成金はおよそ600万人の労働者に適用できるでしょう。そして、その人は二週間につき1500ドルの均一な支払いを受領します。
翻訳③:I have favor all the time and am always very grateful.
翻訳④:I raise a click rate and can connect to the conversion.
②は多少の不自然さがあるものの、意味は通じるでしょう。 ただし、イディオムが含まれている①や、意訳が必要な③、さらには専門性のある④など、砕けた表現や専門性のある文章を苦手としていることが表れています。 ルールや統計をベースにした翻訳機のため、教科書に出てくるような文章構成であれば、精度が高まるのかもしれません。
【エキサイト翻訳】
翻訳①:あいにく、私達は合意に来ることができなかった。従って、私はあなたに戻る必要がある。
翻訳②:賃金補助金は約600万人の労働者に適用可能である。それは1つの2週間あたり1500ドルの平らな支払いを受け取る。
翻訳③:I usually give bringing in many ways and thank you thick.
翻訳④:The click rate is improved and it's linked to conversion.
とても機械的な翻訳です。 Webilo翻訳と同様に、文章規則に沿った文章である②の翻訳は適切であるものの、③に関してはまったく意味の通じない“謎訳”に。 また、①のイディオムを直訳しており、④では「クリック率が改善したのはコンバージョンにある」と、 まったく逆の意味になっています。
【DeepL翻訳】
翻訳①:残念ながらコンセンサスが得られなかったので、またお邪魔します。
翻訳②:賃金補助金は約600万人の労働者に適用され、1週間あたり1500ドルの一律支払いを受けることになる。
翻訳③:We would like to express our sincere gratitude for your continued patronage.
翻訳④:Increase click-through rates and conversions.
Google翻訳のような自然な訳文であるものの、注意して見るといくつか 重大な誤訳が生じています。 ②では隔週1500ドル受けられる補助が1週間1500ドルになっていますし、④ではクリック率とコンバージョンの関係性が失われています。 なお、③はこのまま使用できる正確な翻訳です。
【T-4OO】
翻訳①:残念ながら、合意に達することができませんでしたので、再度ご連絡させていただきます。
翻訳②:賃金補助金は、およそ600万人の労働者に適用され、2週間に1,500ドルの一律の支払いを受ける。
翻訳③:I would like to express my sincere gratitude for your continued support.
翻訳④:Increase the click rate and lead to conversion.
無料自動翻訳の大半が①のconsensusをそのまま「コンセンサス」と翻訳していましたが、「合意」という、一般的な訳になっています。 また、これらの中で唯一、「再度連絡する」というイディオム「I'll come back to you」を認識することができました。 ②③④も含め、いずれにおいても精度が高く、ポストエディット無しでも利用できる訳文です。
無料翻訳サイトの中でもディープラーニングを搭載した翻訳の精度は、従来と比べて格段に上がっています。 しかしながら、全体のニュアンスをつかめなかったり、誤訳が生じたりといったデメリットも見られ、まだまだポストエディット無しでは難しそうです。
一方で、有料のAI翻訳ツールT-4OOは、ポストエディットの工数や手間を最小限に抑え、より効率的に活用できることがわかりました。
英語が苦手な人には、有料のAI翻訳ツールが最適!
無料で提供される自動翻訳機は、海外旅行などの個人利用においては便利であるものの、ポストエディットに要する時間やコスト、誤訳による誤解などを考慮すると、ビジネスシーンでの利用には不向きといえます。
また、明らかな間違いならば気づきやすいですが、よほど英語が堪能でない限り「微妙な翻訳の不具合を見破ることは難しい」という実情もあります。 英語が苦手であればなおさら、「T-4OO」のような正確で自然な翻訳が可能なサービスを使うのが賢明でしょう。
筆者:大庭有美(オオバ ユミ)/バイリンガル·ライター
オーストラリア·シドニー在住30年。15年に渡りオーストラリアの日系媒体にて編集ライターおよび翻訳·通訳として活動。グルメ、芸能、インタビュー、育児、イベント、スポーツ関連の記事を主に担当している。