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ビジネス英語を正確に翻訳する基本テクニック

グローバル化が進む現代、ビジネスシーンにおいて英語を日本語に翻訳する機会はどんどん増えています。しかし、文章の構造や語彙が根本的に違う英語を日本語に翻訳するのは一筋縄ではいきません。特にビジネスシーンにおいては、それぞれの独特なニュアンスや言い回し、風習なども関わってくるため、単純な言語変換の作業だけでは無理が生じます。

今回は、ビジネスシーンで活用できる英日翻訳の基本テクニックや意識することについて、メールでやりとりする文章を例にご紹介します。

ビジネスにおける英日翻訳は4段階に分けて取り組もう(前編)

英日翻訳を正確に、そして効率よく進めるには、4つの段階に分けて取り組むのがおすすめです。例文を見ながらビジネス英語翻訳のコツを確認してきましょう。

【STEP1:原文全体の大まかな翻訳を行う】

効率性が求められるビジネスシーンで、与えられた英文を頭から順番に翻訳するのは、あまりも非効率。それは、単語ひとつの意味にとらわれたり、一行の文に視点を当てすぎたりすることで、全体の文章の意図や意味を見失ってしまう可能性があるからです。

また、メールでのやりとりでは、すべての英文を訳さなくても、重要なポイントのみを抑えておけば十分な場合も。わからない単語や言い回しなどはそのまま横に置いて、まず全体の文章の意味を解読しましょう。このとき、書き手の意図やメールの背景などを念頭においておくと、後に続くSTEP2~4の過程がスムーズになります。

では下記のメールを、大まかに翻訳してみましょう。

<例>
I hope you are well. It is almost 6 months, since we first began our collaboration talk. Although it has been very slow and frustrating at times,Iam sad to inform you, that we are now at the final stage of our project! All I require is nothing but few signatures from Mr. Yamane on the attached contract. I expect you to get back to me ASAP.

文章の前半では、現在進行しているプロジェクトに関して書かれていますが、このメールで重要なのは最後の二文!「規約書に山根さんのサインがほしい、しかも、なるべく早くほしい」ということを伝えるメールです。

【STEP2:細やかな部分を調べながら翻訳する】

不明な単語や表現を調べたり、文章のつながりを考えたり、書き手のニュアンスを読み取って翻訳に加えるのが翻訳の第2段階です。単語ひとつひとつの意味は理解しているのに、いざ単語をくっつけて文章にしてみると、意味がまったく理解できなくなってしまったという経験はありませんか?それは、英語には複数の意味を持つ単語や多義語が多く存在するため、ニュアンスを間違えると意味が通じなくなるからです。

例えば、上記の<例>に登場した‟expect”と‟ASAP”もニュアンスを汲み取ることが大切な言葉です。‟expect”を辞書で調べると、「予期する」「待つ」「期待する」「要求する」「望む」とあり、この単語だけでも翻訳によって状況の解釈がずいぶんと変わることがわかるでしょう。ここで使用されている‟I expect you~”は命令口調のため、文章全体のトーンが最後の一文でガラリと変わっています。

‟ASAP”はas soon as possibleの略で、「できるだけ早く」「至急」「大至急」の意味で使用されます。「できるだけ早く」なのか「大至急」なのか、その緊急度はそれぞれの解釈によって異なりますが、ASAPが大文字で強調されていたことや、文の前後に‟please”のような丁寧な依頼表現がなかったことから、この文例では「大至急」というニュアンスを読み取ることができます。

また、この段階では、原文に隠されているかもしれない皮肉や冗談など、場合によっては翻訳から省くべき表現を見抜くことも重要です。海外のビジネス現場には日常的に皮肉や冗談が飛び交うため、これらをまともに受け止めてそのまま翻訳してしまうと、ひどい誤解を招いてしまう恐れがあります。

例文にも皮肉があったのをお気づきでしょうか?ようやくプロジェクトが最終段階に入り喜ばしいところを、プロジェクトの進展が遅かったことを引き合いに“sad”と皮肉っていたのです。この場合、“I am sad to”の皮肉を「ようやく」という表現に置き換えることで、書き手の意図を変えることなく、簡潔な翻訳にすることができます。

ビジネスにおける英日翻訳は4段階に分けて取り組もう(後編)

    

【STEP3:意味がわかる、自然な日本語に訳する】

この段階はSTEP2の文章の体裁を整える作業となり、原文は使いません。また、簡潔でシンプルに伝わる翻訳が望ましいため、主語や複数系のように省略しても日本語の文章が成立する単語を極力省き、より自然な流れを作ります。下記が最終的にたどり着いた翻訳です。

<例>
I hope you are well. It is almost 6 months, since we first began our collaboration talk. Although it has been very slow and frustrating at times,Iam sad to inform you, that we are now at the final stage of our project! All I require is nothing but few signatures from Mr. Yamane on the attached contract. I expect you to get back to me ASAP.

<例の翻訳文>
最初にコラボレーショントークを始めてから、早6か月が経ちました。非常に遅くて、フラストレーションがたまることもありましたが、プロジェクトがようやく最終段階に入ったことを報告させていただきます。添付した契約書に山根氏からの署名を大至急お願いします。

【STEP4:翻訳内容の最終確認をする】

翻訳の最終段階では、もう一度、英文の原文と日本語訳を照らし合わせて、内容に食い違い が生じていないかを確認します。こうした見直し作業を行うことで、誤訳のリスクを減らし、よりクオリティの高い翻訳へと仕上げることができます。

このように、STEP1からSTEP4までの4つの段階に分けて作業すると、よりスムーズに翻訳作業が進み、ゴールも明確に見えてきます。長い文章の翻訳をする際も、英文を前にして、ため息をつくことも少なくなるでしょう。

高精度な自動翻訳サービスの到来により、翻訳がスピーディーに

英語が堪能であっても、ビジネスシーンにおける英日翻訳は時間も根気も要する大変な作業ですが、そんなときは自動翻訳サービスを効果的に使ってみましょう。高精度なAI自動翻訳の到来により、従来よりもスピーディーに業務を進められるようになります。一昔前の自動翻訳は、文章のおおまかな翻訳はできたものの、ニュアンスや言い回し、皮肉などの翻訳まで機械の力が及ばず、誤訳や不自然な表現が横行していました。しかし、AIによる最新翻訳エンジンを使った自動翻訳では、これまで人間の介在が不可欠とされていた微妙な修正や、各分野の専門用語の翻訳にも対応し、より効率よく正確に翻訳することができるようになっています。人間の翻訳者が必要なくなる時代は、もしかしたらそう遠くないのかもしれません。

筆者:大庭有美(オオバ ユミ)/バイリンガル·ライター
オーストラリア·シドニー在住30年。15年に渡りオーストラリアの日系媒体にて編集ライターおよび翻訳·通訳として活動。グルメ、芸能、インタビュー、育児、イベント、スポーツ関連の記事を主に担当している。